診療グループ紹介

神経グループ

チーフあいさつ

チーフ

根岸 豊

名古屋市立大学
助教

小児神経グループはけいれん、運動・知能・感覚・行動または言葉の障がいなど、脳、神経、筋に何らかの異常がある小児の診断、治療、指導を主に行うグループです。小児神経疾患はなかなか診断にたどり着かないことも多く経験しますが、丁寧な診察、画像検査、生理学的検査、そして当科の得意分野であり近年急速に発展している遺伝学的解析などを行い、可能な限り正確に診断することを心がけています。診断することで治療に結びつくこともありますし、残念ながら現時点で治療法のない疾患でも、より適切な管理ができると考えます。

2023年時点において大学病院の外来では齋藤伸治(教授)、服部文子(准教授:名古屋市立大学医学部附属東部医療センター)、根岸豊(助教)、家田大輔(病院助教)、中村勇治(臨床研究医)、堀いくみ(非常勤医師:海南病院)、佐藤恵美(大学院生)が診療を行っています。また、関連病院でも多くの先生が小児神経疾患の診療を行っており、大学病院との連携を取りながら地域の子どもたちが健やかに育つように精進しています。

臨床・教育

診療では、てんかん、筋疾患、急性脳症、重症心身障がい児・者、発達遅滞の精査など、多様な症例を診ています。各種神経疾患の診断、治療以外にも、かかりつけ患者さんが感染症などで体調を崩した際も対応しています。小児科内での他グループとの連携に加え、小児外科、整形外科、小児泌尿器科、脳神経外科、麻酔科、放射線科などの他科エキスパートとも連携しながら集学的治療を行います。

また、名古屋市立大学小児科は小児神経専門医研修施設、てんかん専門医研修施設として専門医の育成にも積極的に取り組んでいます。てんかん専門医取得のためにも必要なてんかん症例検討会を毎週火曜日に行っています。

主な疾患

てんかん

てんかんは大脳神経細胞の過剰な興奮による症状を繰り返す疾患です。脳波検査や画像検査を行い、児の症状に合わせて抗てんかん薬を投与し、発作の消失を図ります。

急性脳炎・脳症

急性脳炎・脳症は、発熱とともにけいれん発作や意識障害が遷延する非常に重篤な疾患です。治療ガイドラインに則し、できるだけ病勢を抑え、後遺症を少なくするように加療を行います。重症例は集中治療室などの他診療科と協力して治療にあたります。

神経筋疾患

筋ジストロフィー、ミオパチー、脊髄性筋萎縮症を代表とする神経筋疾患について、血液検査や必要に応じて遺伝子検査、筋生検を行い診断します。診断後は児の状況に合わせて適切に治療・サポートしていきます。

神経変性疾患

異染性白質ジストロフィー、副腎白質ジストロフィー、脊髄小脳変性症といった稀な疾患を、画像検査や血液検査、遺伝子診断を行うことにより診断します。児の症状に合わせた薬物療法、サポートを行います。

末梢神経疾患

炎症性多発神経炎(ギラン・バレー症候群など)や遺伝性ニューロパチーを適切に診断します。特にギラン・バレー症候群においては、症状の改善がない場合にはガンマグロブリン療法を行い、症状の改善を図ります。

研究

名古屋市立大学小児神経グループでは齋藤教授の指導の下、多くの競争的資金を獲得し、遺伝学を中心に様々な研究を行っています。教授がこれまで研究されてきたインプリンティング疾患(Prader-Willi症候群、Angelman症候群)の遺伝学的解析や、近年はPrader-Willi症候群関連疾患であるSchaaf-Yang症候群(SYS)に関する研究にも力を入れています。SYSの遺伝学的解析を行い、日本における診断基準を策定し、全国疫学調査を初めて行いました。SYSモデルマウスを使った病態解明、治療法の開発にも取り組んでいます。また、主に当科で診断された希少遺伝性疾患(巨脳症、小頭症などの脳形成異常)の発症メカニズム解明のために、脳オルガノイドを用いた研究を大学院生中心に行っております。このように臨床研究からモデルマウス、iPS細胞などを用いた基礎研究まで、様々な研究を行っており、成果は英語論文として世界に発信しています。

主な研究業績

  1. Nakamura Y, Shimada I S, Maroofian R, Houlden H, Falabella M, Fujimoto, M, et al. Biallelic null variants in PNPLA8 cause microcephaly through the reduced abundance of basal radial glia. medRxiv. 2023-04.
  2. Negishi Y, Kurosawa K, Takano K, Matsubara K, Nishiyama T, Saitoh S. A nationwide survey of Schaaf-Yang syndrome in Japan. J Hum Genet. 2022;67:735-8.
  3. Isobe K, Ieda D, Miya F, Miyachi R, Otsuji S, Asai M, Tsunoda T, Kosaki K, Hattori A, Saitoh S, Mizuno M. Hemorrhagic shock and encephalopathy syndrome in a patient with a de novo heterozygous variant in KIF1A. Brain Dev. 2022;44:221-8.
  4. Hori I, Ieda D, Ito S, Ebe S, Nakamura Y, Ohashi K, Aoyama K, Hattori A, Kokubo M, Saitoh S. Peripheral nerves are involved in hypomyelinating leukodystrophy-3 caused by a homozygous AIMP1 variant. Brain Dev. 2021;43:590-5.
  5. Ieda D, Negishi Y, Miyamoto T, Johmura Y, Kumamoto N, Kato K, Miyoshi I, Nakanishi M, Ugawa S, Oishi H, Saitoh S. Two mouse models carrying truncating mutations in Magel2 show distinct phenotypes. PLoS One. 2020;15:e0237814.

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