サブスペシャルティへの道
心理発達グループ
はじめに
日本の子どものこころの診療は、以前から、こころの問題をサブスペシャリティとする小児科医と、児童思春期をサブスペシャリティとする精神科医によって担われてきました。そのような歴史的背景に鑑み、“子どものこころ専門医”は、小児科専門医と精神科専門医の双方を基盤領域とするサブスペシャリティ専門医として位置づけられています。
“子どものこころ専門医”は、小児心身医学・発達行動小児科学・児童思春期精神医学などを基礎として、子どもの精神疾患、神経発達症(発達障害)、心身症、不登校、虐待など、子どものこころの諸問題にとそれに関連する身体症状に対して、身体・心理・社会・環境・倫理など、子どもを取り巻くあらゆる視点から総合的な診療を行うことができる専門医です。
以上の理念のもとに、子どもこころ専門医制度の研修では、子どものこころの問題に対する医学を実践できる医師を養成するために下記の目標を設定しています。
- 子どものこころの医学を担当できる資質の高い医師を養成する
- 子どもの生理・発達・心理・病理を理解し、子ども特有のこころの疾病に対応する
- 子どもと家族の看護・教育の領域を理解し、子どものこころの医療を包括的に実施する
- 子どもと家族、学校など周囲の社会環境との連携・協同を行い、子どもの健康な成長を促進する
- 子どものこころに関する基礎・臨床研究を理解し、Evidence-based Medicineを遂行し、子どものこころの医学研究を推進する
- 子どもとその家族を中心とした診療を学び、人格の涵養をはかり、信頼される医療が提供できるよう、生涯に渡って自主学習・自己研鑚を行う習慣を獲得する
対象となる専門医(認定医)制度
(2023年4月現在)
子どものこころ専門医(子どものこころ専門医機構)
主な条件
- 基本領域(小児科、精神科)の専門医資格
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基幹施設、連携施設で構成される研修施設群での3年以上10年以内の研修により36単位以上を取得
《単位計算のルール》
- 1日(3時間以上)×12回の研修を1単位
- 1ヶ月に取得できる単位は1単位
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1年間に取得できる単位は1単位以上、12単位まで
例)1週間に半日(3時間以上)の研修を3回以上行うと1年間に12単位の取得が可能であり、3年間の研修で36単位が取得出来ます。
- 研修開始時に登録、基本領域の専門医資格は取得見込みで可
資格取得への道
(最短での取得期間:卒後8年)
小児科の後期研修が修了して以降であれば、どのタイミングでも子どものこころ専門医取得に向けた研修が可能です。最初から子どものこころの診療をサブスペシャリティとして選択しても良いですし、一般小児科医や他のサブスペシャリティの経験を積んだ後でも研修を開始することが可能です。
短期間での取得を目指すのであれば、基幹施設の名市大病院に所属し心理発達外来での研修や連携施設での研修を行う、などで最短3年間の研修で子どものこころ専門医を取得することができます。また、研修施設群の施設に非常勤医師等で勤務することにより、時間をかけて少しずつ研修を積み(単位を取得し)、子どものこころ専門医を取得することも可能です。
専門医取得可能な所属施設
『名古屋市立大学病院子どものこころ専門医研修施設群(小児系)』として下記の施設での研修が可能です(名古屋市立大学病院小児科が基幹施設で他は連携施設)。
- 名古屋市立大学病院小児科
- 名古屋市児童福祉センター
(中央療育センター、児童相談所等) - 名古屋市北部地域療育センター
- 名古屋市西部地域療育センター
- 星ヶ丘マタニティ病院小児科
- 日本赤十字社愛知医療センター
名古屋第二病院小児科
- 名古屋市立大学病院精神科
- 三重県立子ども心身発達医療センター
児童精神科
その後の活躍
子どもこころの専門家として大学で研究ならびに診療を行う、総合病院で一般小児科医として働きながらサブスペシャリティとして診療を行う、療育センターや児童相談所などの福祉機関で働く、心理系の大学などで教員として働く、など、“子どものこころ専門医”が活躍できる場面は非常にたくさんあります。また、日々、子どもに接する一般の小児科医にとっても子どもの発達やこころの問題を診られることは、とても大切なことです。私たちと一緒に、子どもとその家族を心身共に支えられる医師を目指しましょう!