診療グループ紹介

内分泌グループ

チーフあいさつ

青山 幸平

名古屋市立大学
助教

内分泌腺で分泌される物質をホルモンと言います。内分泌腺には、脳下垂体、甲状腺、副甲状腺、膵臓、副腎、性腺などがあり、これらから種々のホルモンが分泌され、血液を介して他の臓器や器官に作用します。これらのホルモン分泌や標的臓器に何らかの異常がある場合に、私たち小児内分泌グループの出番となります。成長ホルモン、甲状腺ホルモン、性ホルモンは身体の成長と密接に関わるため、こどもの身体の成長に関する問題を取り扱うことに関しては、小児内分泌診療グループは適役となります。

現在、大学病院の外来では青山幸平(助教)、鈴木敦詞(非常勤医師:岐阜県立多治見病院)、山口直哉(非常勤医師:一宮市立市民病院)、吉田あや(非常勤医師:名古屋市立大学大学院)が診療を行っています。大学病院の小児内分泌診療チームでは、大同病院、名古屋第二病院、小牧市民病院、海南病院などの名古屋市立大学小児科関連病院でも小児内分泌外来を行い地域の小児内分泌診療に貢献しています。また2023年より大矢知真希が大学院生として私たちのチームに加わって頂き、より厚い体制となっています。

臨床・教育

小児内分泌診療のメインは外来診療であり、入院での診療が必要となる機会は限られています。そのため小児内分泌診療チームでは、毎週臨床カンファレンスを行い、情報の共有を行うと同時に、各々の診療水準を高められるよう取り組んでいます。名古屋市立大学病院の小児科は日本内分泌学会認定教育施設として、内分泌代謝科専門医の育成機関としての役割も担っています。

主な疾患

成長障害

成長ホルモン分泌不全性低身長症、SGA性低身長症、Turner症候群、Noonan症候群は成長ホルモン治療の主な適応疾患です。身体の成長には思春期発来が重要で、思春期が早い・遅いという問題も多く扱います。さらに、軟骨無(低)形成症や骨形成不全症などの骨系統疾患や、ビタミンD不足などによるクル病も診療の対象となります。

下垂体機能障害・尿崩症

先天性や後天性(脳腫瘍や外傷)による下垂体機能障害が診療対象となります。多飲多尿に対し、下垂体後葉障害による中枢性尿崩症、腎性尿崩症、心因性多飲を取り扱います。

甲状腺疾患・副甲状腺疾患

新生児マススクリーニングで発見される先天性甲状腺機能低下症を中心に、後天的な甲状腺機能の亢進症(バセドウ病)や低下症(橋本病)、甲状腺ホルモン不応症、副甲状腺機能異常によるカルシウム異常などを取り扱います。

糖尿病・肥満症

自己免疫の異常による1型糖尿病、肥満に関連しやすい2型糖尿病、単一遺伝子の異常による家族性若年糖尿病(MODY)や新生児糖尿病を取り扱います。2型糖尿病とも関連しやすい肥満症・高脂血症・高血圧も診療の対象となります。

副腎疾患・性分化疾患

新生児マススクリーニングで発見される先天性副腎過形成症を中心に、副腎低形成症、ホルモン産生副腎腫瘍などを取り扱います。出生時に外陰部の未熟性を認める場合には、性腺の内分泌異常を伴うことも多いため、性分化疾患として診療にあたります。

研究

2013年より次世代シーケンサーによる複数遺伝子の網羅的解析が名古屋市立大学の小児科で可能となりました。私たちのグループでは2014年より先天性低ゴナドトロピン性性腺機能低下症に対して、2015年より先天性甲状腺機能低下症に対して、網羅的な遺伝子解析を進めてきました。先天性甲状腺機能低下症の遺伝子解析の中でそれまで報告のなかったSLC26A7遺伝子のホモ接合性機能喪失型変異を同定しました。SLC26A7遺伝子の役割について他施設と共同研究に着手し、SLC26A7蛋白が甲状腺におけるヨードトランスポーターとして働くことを世界で初めて示しました。2018年からは更なる検証としてSLC26A4とSLC26A7の複数のヨードトランスポーターの相補的関係を、CRISPER-Cas9によるSlc26a4、Slc26a7のノックアウトマウスを作成し調べました。現在も、ヨード動態に関わる研究を続けており、ミニ臓器である甲状腺オルガノイドの作成にも着手しています。また近年では環境省が主導している子どもの健康と環境に関する全国調査であるエコチル調査のデータを用いて、出生順序と身長に関わる解析を行いました。今後も様々な視点から小児内分泌に関わる研究を進め、世の中に貢献していきたいと考えています。

主な研究業績

  1. Yoshida A, Kaneko K, Aoyama K, Yamaguchi N, Suzuki A, Kato S, Ebara T, Sugiura-Ogasawara M, Kamijima M, Saitoh S, The Japan Environment And Children's Study Group. Relationship between birth order and postnatal growth until 4 years of age: The Japan Environment and Children's Study. Children. 2023;10:557.
  2. Yamaguchi N, Suzuki A, Yoshida A, Tanaka T, Aoyama K, Oishi H, Hara Y, Ogi T, Amano I, Kameo S, Koibuchi N, Shibata Y, Ugawa S, Mizuno H, Saitoh S. The iodide transporter Slc26a7 impacts thyroid function more strongly than Slc26a4 in mice. Sci Rep. 2022;12:11259.
  3. Tanaka T, Aoyama K, Suzuki A, Saitoh S, Mizuno H. Clinical and genetic investigation of 136 Japanese patients with congenital hypothyroidism. J Pediatr Endocrinol Metab. 2020;33:691-701.
  4. Ishii J, Suzuki A, Kimura T, Tateyama M, Tanaka T, Yazawa T, Arimasu Y, Chen IS, Aoyama K, Kubo Y, Saitoh S, Mizuno H. Kamma H. Congenital goitrous hypothyroidism is caused by dysfunction of the iodide transporter SLC26A7. Commun Biol. 2019;2:270.
  5. Aoyama K, Mizuno H, Tanaka T, Togawa T, Negishi Y, Ohashi K, Hori I, Izawa M, Hamajima T, Saitoh S. Molecular genetic and clinical delineation of 22 patients with congenital hypogonadotropic hypogonadism. J Pediatr Endocrinol Metab. 2017;30:1111-8.

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