サブスペシャルティへの道
救急・集中治療グループ
東部医療センター 救急科 講師
今井 一徳
はじめに
救急・集中治療グループは2021年度より正式にグループとして発足しました。日本における小児救急医・小児集中治療の歴史は、20年程度と浅く、専門医としてのキャリアパスは日本全体でみても、まだまだ確立しているものとは言えません。一方で専門分野としては非常に注目が集まっている分野で、希望者は増え続けており、いわゆるleading hospitalにおける研修プログラムは応募者多数のため数年まちの状況です。このため、全国の施設と協力して、小児救急・集中治療を専門としたい若手の先生を業界全体で後押しし、専門医の育成の体制づくりを急いでいる状況です。本分野で活躍するためには、単に救急外来、集中治療室で患者をマネージメントできるだけでなく、施設間搬送、外科的疾患、外傷診療、麻酔などに習熟し、複数の患者を同時にマネジメントできるよう研修を行う必要があります。さらに最近では、災害時小児周産期リエゾンの制度が確立し、院内災害対策のみならず、災害医療全体へ活躍の分野が広がっています。
本分野では、主に初療・搬送を担当する「救急医」と集中治療を担当する「集中治療医」のどちらが自分の嗜好にあっているかによってキャリアパスが変わってきます。現時点で「小児救急医」「小児集中治療医」という専門医制度が確立されているわけではないので、「こども×急性期」とフィールドを定義した場合に、どのような局面で関わりたいか、によって必要な研修が変わってきます。たとえば、「小児を専門とする救急医(集中治療医)」「救急(集中治療)に慣れている小児科医、小児に慣れている救急医(集中治療医)」では、全く意味合いが異なります。
定型的な研修が確立されていない分野であり、現時点では愛知県内の施設の研修だけでは経験が不足すると考えています。このため、興味を持っていただいた方はできるだけ早めにコンタクトを取っていただき、ご希望を伺いながら愛知県外の専門施設(high volume center)での研修を含め個別のキャリアプランを相談させていただくのが良いと思っています。
対象となる専門医(認定医)制度
(2023年4月現在)
A.救急科専門医(日本専門医機構)
B.集中治療専門医(日本専門医機構)
主な条件
A.救急科専門医
基本領域となるため、日本専門医機構認定プログラムで研修を開始し、プログラム終了後(3年後)の取得が可能
B.集中治療専門医
- 基本領域(内科、小児科、外科など)の専門医資格
- 日本集中治療医学会の認定する集中治療専門医研修施設において1年以上の勤務歴
- 上記勤務歴のうち連続して24週以上専従歴があること
- 集中治療に関する知識・技能終了の条件を満たしていること(診療実績表あり)
- 集中治療に関する学会発表・論文が必須
- 集中治療医学会への入会が必要
資格取得への道
(最短での取得期間:卒後6-8年)
「小児を専門とする救急医(集中治療医)」として活躍されたい場合は、①-③すべての領域を研修する必要があります。
- 小児科研修(3年)
-
救急科プログラム(3年)・集中治療研修(最低1年)
→「救急科・集中治療専門医」取得のための必須条件 - 小児の特性を踏まえた救急・集中治療の研修
②の研修をあいち小児保健医療総合センター救急科、集中治療科など、小児専門施設で行う場合は、専門医取得と同時に③の研修も同時に可能です。その場合は、主に成人を診療対象とする救命救急センター・集中治療室での追加研修をおすすめしています。
ただし肝移植を要するような重症肝不全、先天性気管狭窄、悪性腫瘍を基礎とする病態などは小児の中でも特に専門性が高く、国内の専門施設と連携した研修が必要です。
専門医取得可能な所属施設
- 救急科・集中治療専門医取得のみであれば救命救急センター・集中治療室で可能
- 「小児を専門とする救急医(集中治療医)」として活躍されたい場合、愛知県内での研修希望であれば、現在、あいち小児保健医療総合センターのみ
- その他必要に応じて国内施設と連携
その後の活躍
小児×急性期という文脈で幅広い活躍の機会があります。一方、愛知県内では(実際は、国内全体で見ても)、必要性は認識されてきているものの、まだまだ分野として活立しているとは言い難い分野です。この状況を鑑み、名古屋市立大学小児科では、現在、臨床×教育×研究の枠組みを確立すべく、尽力しているところです。定まった道はまだありませんが、このような取り組みに興味がある方は是非ご連絡ください。