先輩の声
同性として憧れる女性医師も多く
「なんて素敵な職場だろう!」
後期研修中に入局を決めた理由は何ですか?
もともと私は、名市大の関連施設でもある一般病院で小児科専攻医のプログラムを受けていました。その過程で名市大に6カ月間の研修に来たのですが、ここでは出身大学や立場に関係なく「若手を育てよう」という空気に包まれ、不安なことがあるとさりげなくアドバイスしてくださる上級医の先生、論文のサポートをしてくださる先生、同性として憧れる女性医師もたくさんいて「なんて素敵な職場だろう!」と。それまで大学の医局に抱いていた「厳しそう」「怖そう」というイメージがぱっと吹き飛びました(笑)。看護師さんや放射線技師さんなどコメディカルの皆さんもフレンドリーで、とても働きやすい。大学に入局するつもりなどなかった私ですが、育ててくださるご恩返しもあって、入局を決めました。
出産して2カ月で職場復帰されたとか?
はい。後期研修がスタートして約1年後に出産し、2カ月で職場復帰しました。小児科専攻医のプログラムを翌年まで持ち越したくなかったこともありますが、少しでも若いうちに多くを経験したくて。夫のおかげでもあり、当直もやっています!まだ小児科医として経験の浅い年次で出産した私にとっては、さまざまな症例に出合える当直は、ステップアップへの近道と考えているので、産休明けだからとセーブする選択肢はなかったです。ここには子育て中の女性医師も多くいますし、医局全体が子育てに理解があるので、毎日気持ちよく働いています。
忘れられないエピソードはありますか?
大学病院での研修が始まってすぐ、超低出生体重児を初めて担当したときのことです。23週目で生まれた赤ちゃんは私にとって未知の世界でした。NICUでの治療中、感染の疑いで生命の危機に見舞われたときは不安で胸が押しつぶされそうになりました。そのときはただ上級医の先生に頼るだけでしたが、赤ちゃんをコットに移床できたときは胸がジーンとして…。日に日に大きくなる様子を目の当たりに、新生児医療のすごさと赤ちゃんの生命力の尊さを実感しました。
名市大は多彩なコースがあります。どの診療グループに進もうと考えていますか?
それが本当に悩んでいて。赤ちゃんの命と直結する「新生児」や「循環器」にすごく惹かれる一方で、最近は発達障害のお子さんに悩まれるお母さんも多いので「心理発達」にも興味があります。どの診療グループもそれぞれ魅力があって模索中です。進むべき分野を決めたら、どの病院で勤務したらいいのかアドバイスいただけるのも医局の魅力なので、先輩の先生方にいろいろと相談しながら将来の道を決めていけたらと思っています。
育児をしながら、臨床も研究も。
こんな機会をいただけて感謝です!
入局を決めた理由は何ですか?
学生時代にNICUで実習を受けた時、新生児グループの皆さんが本当に楽しそうで。「ここで一緒に働きたい!」と入局しました。その後、周産期母子医療センターのある豊橋市民病院で6年間お世話になりました。東三河地区の重症な赤ちゃんが集中する病院だったので多くの経験を積むことができました。今は名市大のNICUで働いています。近辺に周産期母子医療センターを持つ病院がいくつかあるので、重症患者が集中することはないですが、神経や内分泌など多様性のある教室ということもあって、染色体異常や内分泌疾患といった複合的な病気を抱えた赤ちゃんが遠方から名市大に集まってきます。数少ない症例に出合えるのでとても勉強になります。
大学院生として新生児に関する臨床研究にも携わっているそうですね
テーマは「赤ちゃんが感じる痛みのマネージメント」です。言葉を話せない赤ちゃんは、たとえば採血時にしぶったり泣いたりして注射の痛みを伝えてくれますが、なかにはじっと我慢している赤ちゃんも。痛みを感じているのか、感じていないのか。表情ではなく客観的に数値で測れたら、と思ったのが研究のきっかけです。今は採血時の赤ちゃんのストレス数値をモニタリングしてデータを集めている段階です。実証できれば、赤ちゃんの痛みのストレスを軽減できるだけでなく、イエス・ノーの意思表示の代弁者にもなると期待に胸をふくらませています。
新生児医療による生存率は確実に上がっています。一方、痛みに敏感になったり、脳の一部に影響が出たりと、後遺症が問題視されつつあります。治療の影響によるものか明らかではありませんが、より良い治療を研究することは小児科医の大切な役目だと思っています。このテーマが何かの足がかりとなればうれしいですね。
育児と両立されているとか。育児・臨床・研究の3足のわらじ生活はいかがですか?
娘が7カ月のとき、職場復帰すると同時に大学院に入りました。育児・臨床・研究の3足のわらじ生活がいきなりスタートして、とにかく大変でした!幼い娘はよく発熱するし、私も産後で体力がガクッと落ちていたので本当にどうなるかと…。不安だらけの私に女性医師の先輩が親身に相談にのってくださり、男性医師の皆さんも「大丈夫?」「早く帰って」とあたたかい言葉をいつもかけてくださって。今は臨床のカンも戻って、毎日楽しく仕事をしています。医局には育児、臨床、研究をされている先生はたくさんいます。育児しながら、臨床も研究も指導していただけることに感謝しています。
忘れられないエピソードはありますか?
研修医時代のことです。NICUから元気に退院していく子が多いなか、残念ながらNICUで最後を迎える子がいて。先輩の医師と泣きながらお見送りし、その子の経過を振り返りました。失った悲しみは消えないけれど、それをバネにして、つねに救う方法はないか考え続ける。その積み重ねが小児科医の原点なのだと学びました。
神経疾患のメカニズムを
これからも研究し続けます!
神経グループを専門にした理由は何ですか?
神経に関わる病気はMRI、脳波、神経の伝導速度などの組み合わせによって診断するので一筋縄ではいきません。ときには先天性(遺伝性)の症状を明らかにするために、遺伝子検査が重要な役割を果たすこともあります。また、神経疾患と密接に関わっている脳は解明されていないことが多く、まだまだ発展途上です。そういった奥深い部分に惹かれました。
大学院では基礎研究をされていたそうですが、どのようなテーマでしたか?
遺伝学の分野に興味があって、その解析や疾患メカニズムを追求していました。最初はどうすればいいか全く分からず、まず1〜2年目は小児科の先生方から研究方法を学ばせていただきました。3〜4年目には細胞生化学教室の先生方からも指導を頂き、私の患者さんの血液を使い、神経疾患の発生につながるメカニズムを調べる研究を行いました。簡単に説明すると、iPS細胞を使って神経幹細胞に遺伝子編集を加え、脳オルガノイドで患者さんと同じ変容を起こすというものです。「研究は9割が失敗」といわれますが、興味あるテーマとじっくり向き合うことで有意義な4年間を過ごすことができました。大学院は修了しましたが、同僚たちの応援もあって、空いた時間を使って今も研究に携わっています。好きなことなので、これからも続けていきたいと思います。
医局の魅力を教えてください
新生児、循環器、神経、内分泌、アレルギー、心理発達など、さまざまな専門分野があって、それぞれつながっているのが一番の魅力です。齋藤教授をはじめ、穏やかで優しい先生が多く、お手本にしたい先生もたくさんいるので、学びたい部分を寄せ集めて、どんどん自分をアップデートしていきたいですね。
医師として15年を迎えた今、どんなことを感じていますか?
小児科医としてますます充実を感じています。臨床ではさまざまな症例に出合えるので、治療や知識の幅が広がります。一方、研究では好きなこと、興味あることを突き詰め、深めることができます。2つは異なるように見えますが、臨床で気づいたことを研究で検証するなど、じつは深くつながっています。
小児科医は、担当の患者さんが障害を持ちながらも個性を活かして生きられるよう応援します。そのお手本になるためにも、自分の興味あることを追求する姿勢を大切にしていきます。
一緒に症例を学びながら
仲間たちと共に成長していきたい
内分泌の魅力はどんなところですか?
正常な代謝機能を保つために、下垂体、甲状腺、副腎、性腺、肝臓、心臓、膵臓、腎臓、骨など全身の器官からホルモンが分泌されているのですが、内分泌診療ではこれらのホルモンを数値で客観的に把握できるところが好きなところです。このように内分泌診療は多くの臓器に関わっているので、病気や治療のバリエーションがとにかく豊富です。さまざまな症例に出合えるのも日々のやりがいにつながっています。
医局はどんな雰囲気ですか?
診療グループは専門ごとに細かく分かれていますが、お互いにコミュニケーションが取りやすく、とても風通しのいい環境です。理由を考えてみると、やはり齋藤教授の温かいお人柄、知識の豊富さによるところが大きいのかなと。教授は神経・遺伝が専門ですが、専門以外の領域においても熱心にディスカッションをされ、医局をひとつにまとめる後押しをされています。
卒後17年になる私にとって、後輩たちの育成も大切な役目のひとつと理解しています。教授や先輩方が育んできた医局の風土を大切に受け継いでいきたいと思っています。
若手医師たちをどのように育てていきたいですか?
これまでの私は後輩を指導するというより、一緒に症例を学び、経験を共有することで、共に成長してきたように思います。その姿勢は今も変わっていません。そこで、まずは内分泌グループで小さな勉強会を始めました。日々の診療のなかで、ふと浮かんだクリニカルクエスチョンを一緒に考えたりディスカッションしたりする、いわば「学びの場」づくりです。
臨床現場ではクリニカルクエスチョンは尽きません。しかし多忙な毎日に追われていると、忘れ去られてしまうことも少なくありませんし、一人で向き合うには大変なエネルギーと時間も必要です。それらをみんなでシェアすれば、負担を減らしつつ成果も高まるのではないかと。「ほふく前進」ではありますが、みんなと一緒に成長していきたいですね。
医学部学生の教育にも携わっているとか?
名市大は地域の先生方から多くの患者さんを紹介していただいています。私たちは、そうした信頼や期待に応えていくという責任があると思います。そのためにも、自分たちの診療レベルを上げていかなくてはなりません。そうすれば地域医療のレベルアップにもつながり、それによってより適切な医療を受けられる患者さんがもっと増えると思います。そんな気持ちで、教員の一人として学生たちと接しています。
医師として一生分の知的好奇心を
十分に満たしてくれる領域です
循環器グループを専門にした理由は何ですか?
大人の循環器病は加齢による心血管の病気が多いですが、小児科の場合、生まれながらにして心臓の構造が違ったり、心臓に穴が開いていたりします。このような先天性の心疾患をいかに診断して、修復するかといった、命と直結するこの分野で、社会貢献したいという憧れから、この専門を選びました。
実際に働き始めると、循環器学とは医学だけでなく物理工学とも関連が深い事に気付かされ、学問としても幅広く、医師として一生分の知的好奇心を十分に満たしてくれる領域だと実感しています。
臨床、研究をしながら医学生の教育にも力を入れているとか?
日々の仕事は非常に多彩で、大学病院では循環器グループのメンバーとして、先天性心疾患の子どもたちの専門性の高い診断や治療に携わっています。また、大学研究棟では、動物や細胞を使った基礎研究を行っています。さらには、医学部学生の授業やベッドサイドでの講義も担当しています。医学生に私がいつも言っているのは考えることの大切さ。覚えるだけなら、いずれAIがやってくれる。大事なのは、常に興味をもって考えることです。また、循環器の領域は、心エコーやカテーテル検査など手技を必要とするために職人領域というイメージがありますが「検査は考えを写し出すツールにすぎない」という信念のもと、循環動態の考え方を伝授するよう心掛けています。
医局の魅力を教えてください
一言でいうと「多様性」です。当院の小児科外来のドアや壁には多くの動物が描かれているのですが、多様な動物がいて持続可能な社会が保てるように、ここはさまざまな大学出身者や、多彩な専門領域、偏りのない考え方がバランスよく共存しています。「多様性」は齋藤教授が大切にされているテーマでもあります。教授の専門は神経・遺伝疾患ですが、偏りのない専門性でチームを構成することで、さまざまなニーズに応えられる、持続可能な教室を確立されました。カンファレンスなどでも個性あふれる仲間たちと、いろいろな切り口でディスカッションできる良さを感じています。
国内、国外の留学を経験されているとか?
大学院時代には肺高血圧の分野で日本を代表する研究機関である三重大学で学ばせていただき、その後、世界最高峰のスタンフォード大学で肺循環に関する基礎研究に3年間従事しました。一人ひとりの得意分野を伸ばすため、「伸びる杭は、好きなだけ自由に伸ばす」といった考えで、いろいろな機会を与えていただける教室の風土に心から感謝しています。私にとって、これほど毎日がエキサイティングで生きがいを感じられる職場はありません。