サブスペシャルティへの道
神経グループ
名古屋市立大学 病院助教
家田 大輔
名古屋市立大学 教授
齋藤 伸治
はじめに
小児神経専門医は、「成長発達期にけいれん、運動、知能、感覚、行動、言葉やこころの問題などの神経系機能障害をおこす病気の診療に必要な知識・技能・経験を持っている」と日本小児神経学会が認定した医師のことです。小児神経専門医は、小児期の神経系機能障害をおこす病気について質の高い専門医療を提供するだけでなく、小児科学領域と脳科学領域の1専門領域である小児神経学の専門家として、それらの病気の克服に力を尽くします。また、多くの介護や支援を必要とする重症心身障害、知的障害、発達障害などのある児(者)に、保健・福祉行政、教育関係者などと連携して、より良い療養体制、より良い療育の提供にも力を尽くします。また、日本てんかん学会はてんかん診療を専門的に担う、てんかん専門医を認定しています。小児神経疾患の中でてんかん患者の占める割合は高く、てんかん専門医の取得も重要です。
対象となる専門医(認定医)制度
(2023年5月現在)
A.小児神経専門医(日本小児神経学会)
B.てんかん専門医(日本てんかん学会)
主な条件
A.小児神経専門医
- 日本専門医機構の定める基本領域専門医(小児科専門医またはリハビリテーション科専門医)資格を有すること
- 日本小児神経学会会員歴が連続して5年以上あること
- 小児神経専門医研修施設あるいは研修関連施設において5年間の所定の研修を修了していること
B.てんかん専門医
- 基盤となる分野の専門医あるいは認定医(内科学会認定医、小児科学会専門医、精神神経学会専門医、脳神経外科学会専門医)資格を有すること
- 3年以上引き続きてんかん学会の正会員であること
- 認定研修施設に所属し3年以上の研修歴があり、かつ、初期臨床研修期間あるいは基盤学会における専門医研修のための研修期間を含めて計5年以上であること
資格取得への道
A.小児神経専門医(最短での取得期間:卒後10年)
小児神経専門医取得には、研修施設もしくは研修関連施設での5年間の研修が必要で、その間に小児神経疾患患者30例の症例要約と5例の症例詳細報告が必要です。また、最近5年間に研修単位が50単位以上必要であり、学術集会および地方会に筆頭演者として2回以上発表し、小児神経学に関する論文(筆頭)を執筆した業績(査読がある学術論文に限られる)があることも必要です。
B.てんかん専門医(最短での取得期間:卒後8年)
てんかん専門医取得には、認定研修施設に所属し3年以上の研修歴があることが必要で、種々の病型を含むてんかん患者50例のリストおよび5例の症例詳細記述が必要です。また、研修期間中に日本てんかん学会年次学術総会と日本てんかん学会地方会にそれぞれ1回ずつ出席していることも必要です。
小児神経疾患の理解を深めるためには基礎医学の知識を深めることが不可欠であり、近年専門医資格を取得した医局員の多くは、サブスペシャリティ研修と大学院での研究を並行して行っています。大学や関連病院で神経外来を担当したり、毎週火曜日に大学で行っているてんかん症例検討会への参加により、研究を継続しながらサブスペシャリティ研修を継続することが可能です。
専門医取得可能な所属施設
A.小児神経専門医
- 名古屋市立大学病院
- 聖隷三方原病院
- 名古屋市立大学医学部附属西部医療センター
- 聖隷浜松病院
- 日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院
- 岐阜県立多治見病院
- 豊橋市民病院
- 海南病院
- 大同病院
B.てんかん専門医研修施設
- 名古屋市立大学病院
- 名古屋市立大学医学部附属西部医療センター
- 聖隷浜松病院
その後の活躍
2022年5月現在、東海4県の小児神経専門医は123名(愛知県66名)で、小児科専門医(東海4県で1,848名)のうち6.7%が資格を保有しています。患者さんの数に対して資格保有者は非常に少なく、専門医不在の基幹病院も多くあります。資格を取得できれば関連病院などから引く手あまたです。また、大学で研究活動を継続することも可能です。臨床・療育・研究・教育など、資格取得後の選択肢はたくさんあります。