肝臓グループ
臨床・教育
胆汁うっ滞性疾患では、胆道閉鎖症を念頭に小児外科と連携して各種検査を進めます。年長児の肝疾患では、肝生検や消化管内視鏡検査・治療を成人内科と、IVR(画像下治療)を放射線科と連携して実施します。
主な疾患
胆汁うっ滞性疾患
近隣のクリニックのみならず、大学病院からも多くの患者様をご紹介して頂いています。①ビタミンK欠乏性出血症を予防すること、②胆道閉鎖症を否定することが大切です。多様な疾患を鑑別するため、各種血液・画像検査などを並行して実施します。自然軽快する症例も多いですが、遷延する場合や重症例では遺伝学的検査を実施します。
B型肝炎
母子感染を確実に予防することが大切です。当院ではHBVキャリア妊婦から出生した児について、少なくとも3歳までは定期的にHBs抗体価をフォローして、必要に応じて追加ワクチン接種をします。慢性肝炎例に対するペグインターフェロン製剤や、核酸アナログ製剤を用いた治療も行っています。
C型肝炎
C型肝炎は直接作用型抗ウイルス薬の内服によりほぼ完治します。小児のC型肝炎患者に対するグレカプレビル・ピブレンタスビル治療を行っています。安全性の高い治療ですが、専門施設での実施が望ましいと考えています。
研究
胆汁うっ滞性疾患
小児期発症の胆汁うっ滞性肝疾患を対象とした多施設前向きレジストリ研究(CIRCLe)の協力施設として、次世代シークエンサーを用いた61遺伝子の網羅的解析や、エクソーム解析を実施しています。国内のみならず、海外の施設とも共同研究をしています。新規治療薬の開発研究にも参画しています。
B型肝炎
WHOは2020年に発表したガイドラインにおいて、「高ウイルス量のHBVキャリア妊婦に対して、母子感染予防を目的に妊娠後期に抗ウイルス薬を使用すること」を推奨しました。この推奨文の根拠となるエビデンスに私たちの論文も採用されています。また、ワクチンエスケープ変異株(既存のHBワクチンが無効なHBV)の存在に警鐘を鳴らす報告や、HBs抗原偽陽性の問題を提起する報告をしました。
C型肝炎
日本人小児のC型肝炎患者に対するグレカプレビル・ピブレンタスビル治療の有効性と安全性を報告しました。
主な研究業績
- 伊藤孝一,武田理沙,戸川貴夫,杉浦時雄,齋藤伸治.B型肝炎ワクチン接種後の一過性HBs抗原血症.日本小児科学会雑誌 2023;127:720-4.
- Ito S, Togawa T, Imagawa K, Ito K, Endo T, Sugiura T, Saitoh S. Real-life progression of the use of a genetic panel in to diagnose neonatal cholestasis. JPGN Reports 2022;3:e196.
- Wakano Y, Sugiura T, Endo T, Ito K, Suzuki M, Tajiri H, Tanaka Y, Saitoh S. Antiviral therapy for hepatitis B virus during second pregnancies. J Obstet Gynaecol Res 2018;44: 566-9.
- Togawa T, Mizuochi T, Sugiura T, Kusano H, Tanikawa K, Sasaki T, Ichinose F, Kagimoto S, Tainaka T, Uchida H, Saitoh S. Clinical, pathologic, and genetic features of neonatal Dubin-Johnson syndrome: A multicenter study in Japan. J Pediatr 2018;196:161-7.e1.
- Togawa T, Sugiura T, Ito K, Endo T, Aoyama K, Ohashi K, Negishi Y, Kudo T, Ito R, Kikuchi A, Arai-Ichinoi N, Kure S, Saitoh S. Molecular genetic dissection and neonatal/infantile intrahepatic cholestasis using targeted next-generation sequencing. J Pediatr 2016;171:171-7.