循環器グループ
チーフあいさつ
篠原 務
名古屋市立大学
助教
小児循環器疾患には生命に直結するような緊急性の高い疾患が多いため、チーム一丸となり患者さん及びご家族に対し責任感を持って真摯に対応できることを心がけています。名市大小児循環器チームでは、伝統的に心臓血管外科医と協力し先天性心疾患の治療・管理を行なってきました。現在も、その系統を引き継ぎ、名市大各診療科（循環器内科、心臓血管外科、麻酔科、産婦人科、新生児科）と連携を取り、出生前（胎児期）から新生児・小児期、さらには成人に至る先天性心疾患の診療を継続・発展させています。
現在、名古屋市立大学病院を中心に、あいち小児保健医療総合センター、日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院、名古屋市立大学附属西部医療センター、豊橋市民病院などの関連病院施設と共に、質の高い小児循環器診療の提供、高度な研究（基礎研究・臨床研究・多施設共同研究）、若手医師育成に励んでいます。
臨床・教育
名市大小児循環器チームは、それぞれの医師が各自の専門分野や得意とする領域を中心に、相互にサポートしながら診療にあたっています。また各診療科とも定期的にカンファレンスを行い、治療方針・管理を検討し、患者さん毎にきめ細やかな診療を行うことをモットーにしています。具体的には、胎児診断による出生前からの家族との関わり合い、新生児の危急的心疾患に対する管理、カテーテル治療、詳細な術前評価、周術期集中治療管理、外来における適切な日常生活管理、成人先天性心疾患の移行期医療、学校検診業務など、私たちの対応する診療範囲は非常に多岐に渡ります。
教育面としては、小児循環器専門医師育成のため名古屋市立大学及び関連病院での修練を積めるようプログラムを組んでいます。さらには関連病院外施設での研修による国内留学も取り入れています。国内留学によって多施設の知識や経験を融合・昇華させることで、今日の名市大小児循環器診療の向上に寄与しています。
主な疾患
先天性心疾患
心室中隔欠損症、心房中隔欠損症、動脈管開存症、ファロー四徴症、単心室症など
成人先天性心疾患
ファロー四徴症修復術後、フォンタン手術後など
後天性心疾患
川崎病、心筋症（肥大型・拘束型・拡張型）、急性心筋炎、肺動脈性肺高血圧症など
不整脈
頻脈性不整脈（発作性上室性頻拍など）、徐脈性不整脈（洞不全症候群・完全房室ブロックなど）、遺伝性不整脈（先天性 QT 延長症候群など）
研究
現在、私たちが取り組んでいる研究は、臨床現場から浮かび上がる疑問を臨床研究や基礎研究へ応用し、新たな知見を得て世間に広く発信していくことを理念に掲げています。基礎研究としては、国内留学先の三重大学や海外留学先の米国スタンフォード大学で培った研究マインド・手法をもとに肺高血圧に関する研究を中心に進めています。臨床研究については、心臓超音波や心臓 MRI など様々なモダリティを用いて、先天性心疾患に対する手術治療前後の心機能評価を行うため、新たな評価法の確立を目指しています。また、川崎病や心筋症等の遺伝子解析を行い、病態解明に迫ることを目的として多施設共同研究にも参加しています。
研究テーマ
- 高シェアストレスモデルによる肺高血圧発症機序の解明
- 先天性心疾患修復術前後におけるspeckle tracking法を用いたstrain心機能解析
- 心臓MRIを用いた先天性心疾患における新たな血流解析
- 次世代シーケンサーを用いた網羅的 miRNA 解析による川崎病の病態解明
- COVID-19ワクチン関連心筋炎と感染による心血管合併症に関する疫学調査と原因検索
- Fontan 術後に発症するタンパク漏出性胃腸症に対する腸内細菌叢の関与（共同研究）
- 小児心疾患の臨床遺伝学的研究（共同研究）
- 小児肝線維性疾患の診断バイオマーカーの探索と臨床応用に資する研究（共同研究）
主な研究業績
- Oshita H, Sawada H, Mitani Y, Tsuboya N, Kabwe JC, Maruyama J, Yusuf A, Ito H, Okamoto R, Otsuki S, Yodoya N, Ohashi H, Oya K, Kobayashi Y, Kobayashi I, Dohi K, Nishimura Y, Saitoh S, Maruyama K, Hirayama M. Perinatal hypoxia aggravates occlusive pulmonary vasculopathy in SU5416/hypoxia-treated rats later in life. Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol. 2022;323:178-192.
- Ishida T, Suzuki K, Koyama S, Shinohara T, Saitoh S. Acute myocarditis following coronavirus disease 2019 vaccination in a 14-year-old Japanese boy. Pediatr Int. 2022;64:e15256.
- Moonen J-R, Chappell J, Shi M, Shinohara T, Li D, Mumbach MR, Zhang F, Nair RV, Nasser J, Mai DH, Taylor S, Wang L, Metzger RJ, Chang HY, Engreitz JM, Snyder MP, Rabinovitch M. KLF4 recruits SWI/SNF to increase chromatin accessibility and reprogram the endothelial enhancer landscape under laminar shear stress. Nat Commun. 2022;13:4941.
- Suzuki K, Kato T, Koyama S, Shinohara T, Inukai S, Sato J, Yamamoto H, Omori D, Yoshida S, Takeda S, Nishikawa H, Ohashi N, Sakurai H, Saitoh S. Influence of percutaneous occlusion of atrial septal defect on left atrial function evaluated using 2D speckle tracking echocardiography. Int Heart J. 2020;61:83-8.
- Shinohara T, Sawada H, Otsuki S, Yodoya N, Kato T, Ohashi H, Zhang E, Saitoh S, Shimpo H, Maruyama K. Macitentan reverses early obstructive pulmonary vasculopathy in rats: early intervention in overcoming the surviving-medicated resistance to apoptosis. Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol. 2015;308:523-38.
