学生・研修医の方へ

准教授からのメッセージ

名古屋市立大学大学院 医学研究科 新生児・小児医学分野 准教授 岩田 欧介

准教授 岩田 欧介

未来は予測できる、だからもっと良くできる

最新の科学的根拠に基づいた診療や、医療の発展をもたらす研究は、医学のフロントラインに立つ大学病院の重要な使命です。しかし、私たちのターゲットは、先進医療の対象となる最重症例や希少疾患だけではありません。大学病院であっても、病児の大半は自らの治癒力とほんの少しの医療サポートによって、病態を克服したり、病気と付き合いながら家族や社会の中で成長を続けて行きます。“子どもが自分で回復する力を最大限に引き出すこと”、“過剰な不安や制約から子どもと家族を自由にすること”を大切にする所以です。また、初代教授小川次郎先生が遺した“グッドドクターになれ”と言うシンプルなメッセージが象徴するように、コモンディジーズから希少疾患まで切れ目なく診療できる、子どもたちの守護神を育てることは、私たちのもう一つの重要な使命です。

私たちの教室では、医学部生、初期研修医、小児科専攻医、サブスペシャルティ修練医、大学院生など、様々なステージの医師と、日々、学びを共にしています。良き小児医療の担い手になるためには、問題や疑問を放置せずに、

  1. 解決に必要な情報を収集
  2. 信頼できる情報の吟味と自然経過の予測
  3. 懸念される有害事象を防ぐ介入
  4. タイムリーな再評価

からなるサイクルを回し続けることが重要です。正確な予測は根拠に支持される治療の投入を容易にします。一方でエビデンス不毛の病態では、手に入る最善の科学的根拠に基づく判断が求められます。不確かな根拠を吟味し、最善の一手を絞り出すプロセスでは、真の総合力が試されます。名古屋市立大学と連携施設の小児科では、医学部生の段階からこのようなサイクルを用いた判断を実践しています。

私たちが誇る全国有数の連携施設は、医師として、小児科医としてのスタートに最高の環境と言えるでしょう。基本的な手技と判断の習得後は、前述のような、不確実な情報から正確な判断をするトレーニングが始まります。意外にも、この極めて臨床的なスキルの獲得には、医学研究が不可欠です。ある現象を証明するには、“予想が正しいといいなあ”と言う期待だけでなく、予想する現象が雑音にかき消されることなく観察される必要があります。観察系のデザインや結果の解釈を通じて、客観的で論理的な思考を身に着けることは、リテラシーを高めることそのものです。小児科研究室では、ゲノムやオルガノイド、シングルセル解析に代表される先端技術を用いた研究から、災害医療や少子化対策に至る、多彩でユニークなチームを擁し、学生からポスドクまでの多様な研究者に支えられています。連携施設で基本技術を身に着けたら、一度は大学の研究を覗いてみましょう。世界で闘うメンターたちが、みなさんの臨床的疑問から生まれる多様なテーマに対し、最適な手法を用いて、確実に答えの出るデザインで研究を支援し、世界への発信まで並走します。

前述の小川次郎先生は、小児医療が感染症治療と同義語であった時代に、代謝疾患や早産児医療の重要性を認識し、大胆な先行投資を行った結果、教室からはこれらの分野のパイオニアが多く輩出されました。少子高齢化が進む今、私たちはただ“希少児”に提供する医療の質を上げることで小児医療の活路を見出すだけでなく、なぜ家族や子どもを持つ選択が敬遠されるのかを科学的に分析し、働き方を、子育てを、社会を変えるべく、名古屋市と産業経済界とタッグを組んだ超大型プロジェクトを立ち上げています。可能性を信じて挑戦を始めた皆様といっしょに、子どもたちの未来のために、ともに汗を流すことができるのを楽しみにしています。

名古屋市立大学での小児科研修

私たちは子どもと子どもを取り巻く社会に様々な視点で向き合うことができる小児科医を育みます。そのために臨床研修、小児科専門研修、サブスペシャルティ研修、大学院進学、海外留学、教育、社会貢献、公衆衛生、地域医療といった多彩なステージを提供し、経験豊富なスタッフでサポートします。また、私たちは医師である前に人間であり、それぞれが背負う様々な背景、それらの背景を基盤にした個性を尊重します。医師の成長には人間としての成長が不可欠ですが、そのために互いを思いやり支え合う環境が重要な役割を果たします。名古屋市立大学小児科は、多様な個人の取り組みを組織全体で受け止めるバランス良い環境が重要と考え、小児科医の成長の場を伝統的に育んでいます。

研修プログラム

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