シャーフ・ヤング症候群の
多くの患者さんは
生まれてすぐの治療が
必要となります。
シャーフ・ヤング症候群(Schaaf-Yang症候群:SYS)は、2013年に疾患概念が確立されたばかりの比較的新しい疾患ですが、近年の研究で詳しいことがわかってきました。様々な合併症を伴い、多くの患者さんは生まれてすぐの時期から治療が必要となります。
このページでは患者さんの成長過程で、定期的な健康管理、合併症のスクリーニングを成長発達とともに行えるよう、チェックリストを掲載しております。みなさまの健康管理に少しでもお役に立てることを願っています。
2024年「Schaaf-Yang 症候群の診療および遺伝学的診断ガイドラインの作成と
レジストリー作成と自然歴に関する研究班」
シャーフ・ヤング症候群における健康管理
ほとんどすべての患者さんで発達の遅れが認められます。しかし発達の個人差は非常に大きく、特性に応じた個別の支援が必要です。定期的な発達評価とその評価に応じたリハビリテーションや療育が必要になります。自閉スペクトラム症の合併も認められ、必要に応じ児童精神科へのご相談も推奨されます。
お口からミルクを飲んだりお食事をとったりすることがうまくできないことがあります。体重や身長が十分に増えない場合は経管栄養*が必要になります。また、嘔吐を繰り返すこともあります。必要に応じて専門家へのご相談が必要になります。
幼児期から成長障害を呈し低身長となることが多いです。
一方で、小児期に肥満となるケースも見られ、栄養の指導が必要になります。
*様々な方法で胃や腸にチューブを挿入して、ミルクなどを直接注入すること
多くの症例で関節拘縮を出生時より認めます。早期のリハビリテーションによって症状が緩和する可能性があり重要です。また、成長に伴い側弯症が目立ってくることもあります。必要に応じて整形外科医の診察を受けましょう。
気管支炎や肺炎といった呼吸器感染症を繰り返すことがあります。また急性脳症の合併も報告されており、発熱後にけいれん発作を繰り返したり、意識障害が続くときは注意が必要です。
斜視、視神経低形成・萎縮などが合併症として報告されています。3歳までに一度眼科を受診し、必要に応じて定期的なフォローを受けましょう。
低身長に対して成長ホルモン(GH)治療の対象になることがあります。また、汎下垂体機能低下症や尿崩症といったホルモン異常を合併することがあります。SYSと診断された場合には、一度は小児内分泌科でホルモンなどの検査を受けることが必要です。また、小陰茎や停留精巣を合併するときは、泌尿器科受診が必要です。
健診の手引き
-
新生児期
- チェック項目
- 一般診察
- 血液検査:電解質、血糖値など
- 成長:身長・体重・頭囲
- 摂食:哺乳/嚥下機能・胃食道逆流
- 骨格:関節拘縮
- 気道:喉頭軟化症、気管軟化症など
- 心臓:心雑音/心エコー・心電図
- 外性器(男児) :停留精巣、小陰茎
- (必要に応じて)遺伝学的検査
- 必要により連携
- リハビリ科など
- 摂食・栄養指導
- 整形外科
- 耳鼻咽喉科
- 小児循環器科
- 泌尿器科
- 家族支援
(ソーシャルワーカーなど)
-
6か月
- チェック項目
- 一般診察
- 成長:身長・体重・頭囲(体重増加不良)
- 発達:(必要に応じて)リハビリ
- 摂食:哺乳/嚥下機能・胃食道逆流
- 骨格:関節拘縮、前弯、側弯など
- 神経:熱性けいれん、てんかん
- 外性器(男児):停留精巣、小陰茎
- 必要により連携
- リハビリ科など
- 摂食・栄養指導
- 整形外科
- 小児神経科
- 泌尿器科
- 家族支援
(家族会への紹介など)
-
12か月
- チェック項目
- 一般診察
- 成長:身長・体重・頭囲(体重増加不良)
- 発達:(必要に応じて)リハビリ
- 摂食:摂食・拒食
- 骨格:関節拘縮、前弯、側弯など
- 神経:熱性けいれん、てんかん
- 外性器(男児):停留精巣、小陰茎
- 心臓:心雑音/心エコー・心電図
- 必要により連携
- リハビリ科など
- 摂食・栄養指導
- 整形外科
- 小児神経科
- 泌尿器科
- 小児循環器科
-
18か月
- チェック項目
- 一般診察
- 血液検査:下垂体機能、血糖値など
- 成長:身長・体重・頭囲
- 発達:(必要に応じて)リハビリ
- 摂食:摂食・拒食
- 骨格:関節拘縮、前弯、側弯など
- 神経:熱性けいれん、てんかん
- 外性器(男児):停留精巣、小陰茎
- 必要により連携
- 小児内分泌科
- リハビリ科など
- 摂食・栄養指導
- 整形外科
- 小児神経科
- 泌尿器科
-
2歳
- チェック項目
- 一般診察
- 成長:身長・体重・頭囲
- 発達:リハビリ
- 摂食:摂食・拒食
- 骨格:関節拘縮、前弯、側弯など
- 神経:熱性けいれん、てんかん
- 外性器(男児):停留精巣、小陰茎
- 視覚:斜視、屈折異常など
- 必要により連携
- リハビリ科など
- 摂食・栄養指導
- 整形外科
- 小児神経科
- 泌尿器科
- 眼科
- 家族支援
-
3歳
- チェック項目
- 一般診察
- 成長:身長・体重・頭囲
- 血液検査:下垂体機能、血糖値など
- 低身長の場合:内分泌学的評価
- 発達:リハビリ
- 摂食:摂食・拒食・過食
- 骨格:関節拘縮、前弯、側弯など
- 神経:熱性けいれん、てんかん
- 外性器(男児):停留精巣、小陰茎
- 心臓:心雑音/心エコー・心電図
- 視覚:斜視、屈折異常など
- 必要により連携
- 小児内分泌科
- リハビリ科など
- 摂食・栄養指導
- 整形外科
- 小児神経科
- 泌尿器科
- 小児循環器科
- 療育などへの紹介
- 眼科
- 幼稚園・保育園・
通園施設等への通園準備
-
4-6歳
- チェック項目
- 一般診察
- 成長:身長・体重・頭囲
- 発達: 発達検査・知能検査など
- 視覚:斜視、屈折異常など
- 神経:熱性けいれん、てんかん
- 心臓:肥大型心筋症・血圧
- 骨格:関節拘縮、前弯、側弯など
- 睡眠障害:閉塞性無呼吸など
- 必要により連携
- 家族支援・就学相談・
心理テスト - 眼科
- 小児神経科
- 小児循環器科
- 整形外科
- 耳鼻咽喉科
- 幼稚園・保育園・
通園施設等での
集団生活の経験
-
小学生
- チェック項目
- 学校での状況
- 成長:身長・体重・頭囲
- 発達: 発達検査・知能検査など
- 視覚:斜視、屈折異常など
- 神経:てんかん
- 心臓:肥大型心筋症・血圧
- 骨格:関節拘縮、前弯、側弯など
- 睡眠障害:閉塞性無呼吸など
- 必要により連携
- 家族支援
- 眼科
- 小児神経科
- 小児循環器科
- 整形外科
- 耳鼻咽喉科
- 学校との連携