新生児グループ

1. メンバー (2021年4月時点)

岩田欧介(准教授)、戸川貴夫(講師)、久野正(病院助教)、岩田幸子(病院助教)、横井暁子(臨床研究医)、加藤晋(助教)、津田兼之介(病院助教)、川瀬恒哉(病院助教)、水谷優子(病院助教:西部医療センター)、深谷聡子(大学院生)、中村泰久(大学院生)、鈴木智子(大学院生)

 

2. 臨床・教育

初代小川次郎教授は日本における新生児医療の父として知られ、ここ名古屋市立大学において黎明期の新生児医療の礎を築きました。新生児医療は名古屋市立大学小児科の伝統として更なる発展を遂げ、今日も日本と世界をリードする臨床・教育・研究体制が引き継がれています。関連施設の大半(名古屋市立大学病院西部医療センター名古屋第二赤十字病院聖霊病院大同病院海南病院小牧市民病院一宮市立市民病院豊橋市民病院愛知医科大学病院市立四日市病院聖隷三方原病院聖隷浜松病院)が地域もしくは総合周産期母子医療センターNICUの指定を受け、東海地区の周産期医療の中核を担っています。新生児専門医を取得している医局員は関連施設とあわせて約40名にのぼります。

1.大学病院の利点を生かした各専門科との連携

名古屋市立大学病院NICUは現在、NICU12床、GCU15床の合計27床で運営しています。2017年度以降の人員の増強や無痛分娩センター開設による相乗効果で、分娩数およびNICU入院数が増加を続けています。産婦人科部門の看板である臨床遺伝医療部や不妊・不育症外来と関連して、超早産児だけでなく、先天的な多臓器不全に対し、長期間集中管理を必要とするハイリスク症例が多くを占めるのが特徴です。

また、アクティビティの高い小児循環器・小児心血管外科チームとの共闘で、先天性心疾患のクリティカルケアを多く経験できることも大きなアドバンテージです。また、初代小川次郎教授が描いた“母と子を中心にした医療”を支えるように発展した小児の外科・泌尿器科・眼科・脳神経外科チームのサポートを受けて、新生児の外科疾患にも高いレベルで対応することができる、県内でも数少ない施設です。外科医の集約化の流れから外科症例を管理しないNICUが増えている中で、名古屋市立大学病院NICUが新生児医療を志す先生方に、偏りのない研修機会を提供できる施設であり続けることも大切な役割と考えています。

2.全員で診て,全員で考える

主治医制は1人1人の患者さんに深く関わることができる一方で,長期間集中治療を要する重症児では医師にかかる負担は過重となり、ベストな判断ができなくなることも少なくありません.主治医に重要な判断が集中することで、診断や治療に対する多面的な考え方が排除されることもよく見られる弊害です.特にNICUに入院する重症児では,チーム一丸となっての素早い情報収集と決断・行動が求められます.主治医によって医療の質が変わらないよう、私たちは365日、1日に何度も、チームによる情報の共有と、想定外をなくす熱い議論を繰り返しています.このことにより

・こまめな情報共有が素早い軌道修正が可能となります.

・医師,看護師のみならず,家族にもチームの一員として参加して頂くことを意識しています.このことにより早期から退院にむけての展望が共有され,一日も早い在宅移行が可能になります.

・私たち医療者も一人の親であり,人間です.プライベートも大事に心身ともに健康に過ごすことが必要と考えています.常に全力で診療にあたるため,お子さんをお預かりするという重大な責任を果たすためにも常にリフレッシュした状態で診療にあたることを心掛けています.

3.新生児時蘇生法の普及,啓発活動

名古屋市立大学病院は新生児蘇生法普及事業の愛知トレーニングサイトであり、新生児蘇生法講習会開催の中心的な役割も担っています。多くの学生・医師・看護師・助産師などに新生児蘇生法を習得していただく機会を提供しています。

4.多様性と受容性に富んだ研究環境

現在の臨床エビデンスは不完全であり,だれしも不足分を経験的仮説で補っています.日々の絶え間ない仮説思考は,臨床現場からクリニカルクエスチョンを生み出すことにつながります.多忙な新生児の集中治療現場で,決められた時間に研究するのは困難ですが,それぞれのスタッフが自分のテーマを持ち,研究活動を展開しています。研究活動は小児科内にとどまらず,臨床・基礎講座とのコレボレーションも積極的に行っています.また近年では台湾成功大学との研究提携を開始し,日本・台湾の合同チームから世界に新たなエビデンスを発信しています。

 

3. 研究

  • 早産児の出生早期からの言語聴覚刺激や視覚刺激が発達予後にもたらす効果(岩田欧介・深谷聡子・鈴木智子)
  • 新生児の痛みや慢性ストレスの科学的定量(岩田欧介・深谷聡子・鈴木智子)
  • 高周波数超音波プローブを用いた新生児脳傷害のベッドサイド評価(岩田幸子・中村泰久)
  • NICU災害トリアージ法の確立(岩田欧介・今井一徳)
  • 新生児の血清フェリチン値を規定する因子の検討(久野正)

血清フェリチンは急性期反応蛋白の側面を有するが、関連する因子は多岐にわたります。新生児フェリチン値に強く関連する因子を明らかにすることで、疾病の早期診断と治療に活かしたいと考えています。方法は主に周産期センター入院児の臨床記録を後方視的に検討です。

  • 新生児胆汁うっ滞性疾患の網羅的遺伝子解析による稀少難病の早期診断と病態解析(戸川貴夫)

年間およそ100件近い解析依頼を全国の小児科、NICUから受けています。大学院生の伊藤彰悟先生が精力的に解析をして下さり、分子遺伝学的に診断がつく症例はおよそ35%となっています。最近は筑波大学小児科今川和生医師との共同研究で、対象疾患の遺伝学的解析の底上げも図っています。一方、病態解析、治療法開発の取り組みは東京大学薬学部林久允助教と共に行い、基礎実験についても学ばせていただいています。また最近では共同研究として、ベトナムのハノイにあるVINMEC International Hospitalから解析依頼があり、驚きの発見をしています。現在、国内外で共同研究をしていますが、若手医師の参画が不可欠で次世代のホープを募集しています。

  • マウスモデルを用いた慢性肺疾患の病態解析と治療法の開発(加藤晋・深谷聡子・鈴木智子)

H29年度から文部科学省科学研究費補助金を得て、実験系の確立と解析を進めています。動物センターに設置したチャンバーを用いて高濃度酸素暴露による慢性肺疾患マウスモデルを作成し、肺胞形成に関わる成長因子の活性化に関わる酵素をターゲットに、新たな疾患概念の確立に向けて研究を進めています。他の診療グループと共同でNCU肺疾患研究グループを立ち上げ、得意分野を持ち寄ってオンリーワンの研究を追求しています。

  • 新生児脳傷害の包括的病態解明と再生促進技術の開発(川瀬恒哉・中村泰久)

神経発達・再生医学分野(澤本和延教授)との共同研究で主にマウスを用いた実験を展開しています。メタボローム解析・single cell RNA-seq・3次元電子顕微鏡など最先端の技術を取り入れています。新生児脳傷害の再生医療の開発につなげたいと考えています。

  • Neonatal research Network(NRN)データベースネットワーク事業への参加(岩田幸子・加藤晋)
  • 近赤外線時間分光法を用いたベッドサイドでの新生児脳損傷の定量評価(津田兼之介・岩田幸子)
  • ビッグデータに基づいた胎便吸引症候群の発症因子の検討(横井暁子・後藤玄夫:西部医療センター・岩田欧介)
  • APRスコアを用いた超早産児のバクテリアルトランスロケーションと敗血症発症のメカニズム解明(横井暁子・後藤玄夫・岩田欧介)

医局の先生方との共同研究

  • 人工呼吸管理における加温加湿の非侵襲的定量(中根:豊橋市民病院・岩田欧介・今井一徳)
  • 循環障害を発症したMD双胎の発症予測因子の検討(横山岳彦:名古屋第二赤十字病院・岩田欧介)

4. 獲得研究費 (2021年4月時点)

岩田 欧介

・”母親の録音言語は早産児の言語発達を改善するか?”(文部科学省科学研究費 基盤A)

・”痛み・苦痛を客観定量する簡便な方法の確立~意思表示困難者の声が反映されるケアを求めて” (科学技術振興機構 創発的研究支援事業)

戸川 貴夫

・“遺伝性胆汁うっ滞疾患に対する全ゲノム解析による新規分子病態の発見と診断率の向上”(文部科学省科学研究費 基盤C)

岩田 幸子

・”睡眠同期を中心にした母児関係構築の遅れが母の育児不安と児の高次脳機能に与える影響” (文部科学省科学研究費 基盤C)

加藤 晋

・”肺胞マクロファージの炎症調節機能に着目した重症型慢性肺疾患の病態解明” (文部科学省科学研究費 基盤C)

津田 兼之介

・”Late preterm児の周生期ストレスに対する脳循環制御の解明” (文部科学省科学研究費 若手研究)

川瀬 恒哉

・”早産児脳傷害の包括的病態解明と神経再生促進技術の開発” (文部科学省科学研究費 若手研究)

・”胎児から新生児へのアミノ酸代謝変化とその異常 -生後の神経幹細胞機能との関わり-” (公益財団法人 小児医学研究振興財団 アサヒグループ研究助成)

5. 近年の研究業績

1.Tsuda K, Shibasaki J, Isayama T,et al. Body temperature, heart rate and long-term  outcome of cooled infants: an observational study. Baby Cooling Registry of Japan. Pediatr Res. 2021 Online ahead of print.

2. Mizutani Y, Kinoshita M, Lin YC, et al. Temporal inversion of the acid-base equilibrium in newborns: an observational study. PeerJ. 2021;9:e11240

3. Hayakawa K, Kawase K, Fujimoto M, et al. Utility of breakpoint-specific nested-PCR for the diagnosis of Emanuel syndrome. Pediatr Int. 2021 (in press)

4. Iwata O, Iwata S, Lin YC, et al. Promoting sound development of preterm infants in the name of developmental neuroscience: Beyond advanced life support and neuroprotection. Pediatr Neonatol. 2021 ; 62 (Suppl 1):S10-S15.

5. Kato S, Iwata O, Yamada Y, et al. Standardization of phototherapy for neonatal hyperbilirubinemia using multiple-wavelength irradiance integration. Pediatr Neonatol. 2020;61(1):100-105.

6. Suzuki T, Togawa T, Kanno H, et al. A Novel α-Spectrin Pathogenic Variant in Trans to α-Spectrin LELY Causing Neonatal Jaundice With Hemolytic Anemia From Hereditary Pyropoikilocytosis Coexisting With Gilbert Syndrome [published online ahead of print. 2020 Apr 13. J Pediatr Hematol Oncol.

7. Iwata S, Kinoshita M, Fujita F, et al. Peripartum depression and infant care, sleep and growth. Sci Rep. 2019;9(1):10186.

8. Yokoi K, Iwata O, Kobayashi S, Muramatsu K, Goto H. Influence of foetal inflammation on the development of meconium aspiration syndrome in term neonates with meconium-stained amniotic fluid. PeerJ. 2019;7:e7049.

9. Iwata S, Kinoshita M, Okamura H, et al. Intrauterine growth and the maturation process of adrenal function. PeerJ. 2019;7:e6368.

10. Tsuda K, Iwata S, Mukai T, et al. Body Temperature, Heart Rate, and Short-Term Outcome of Cooled Infants. Ther Hypothermia Temp Manag. 2019;9(1):76-85.

11. Ohshita H, Kawase K, Takagi D, Kondo S, Saitoh S. Regional Differences in Clinical Features of Kaposiform Hemangioendothelioma of the Intestinal Tract. J Pediatr Hematol Oncol. 2018;40(6):491-493.

12. Jinnou H, Sawada M, Kawase K, et al. Radial Glial Fibers Promote Neuronal Migration and Functional Recovery after Neonatal Brain Injury. Cell Stem Cell. 2018;22(1):128-137.e9.

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