血液・腫瘍

1. メンバー(2021年4月現在)
亀井美智(助教)、武田理沙(臨床研究医)
伊藤康彦(西部医療センター 小児医療センター長)

2. 臨床・教育
1)小児血液・腫瘍の臨床
関連病院、地域の施設から多くの小児血液疾患、腫瘍性疾患をご紹介していただいています。
主な血液疾患は、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、悪性リンパ腫、一過性骨髄異常増殖症(TAM)、ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)、再生不良性貧血、難治性ITP、血球貪食性リンパ組織球症、難治性溶血性貧血など、悪性疾患・良性を含みます。固形腫瘍は、横紋筋肉腫、Ewing肉腫、骨肉腫、再生不良性貧血、Wilms腫瘍、肝芽腫、神経芽腫、など多岐にわたります。特に固形腫瘍については、集学的治療が必要となるため、小児外科、小児泌尿器科、脳神経外科、放射線科など院内の各科と連携して治療を行っています。また、難治性固形腫瘍を中心に、造血幹細胞移植を含めた治療に取り組んでいます。

血液腫瘍グループが対応する主な疾患

日本小児がん研究グループ(JCCG)の登録施設としてプロトコール治療を行い、臨床試験の取り組みも多数行っており、小児がんの標準的治療の確立に努めています。

当院で登録治療中の全国臨床試験(2021年6月1日現在) 

2)名市大の小児血液・腫瘍疾患に対する臨床体制の取り組み
・陽子線・IMRT療法
名古屋市立大学医学部付属西部医療センター小児科、名古屋陽子線治療センターと連携して小児陽子線Cancer Boardでの症例検討、近隣の小児がん症例の陽子線治療の受け入れ支援をしています。近年、名古屋市立大学放射線科のトモセラピーと陽子線治療を組み合わせるなど、より放射線治療の特性を生かした集学的治療、化学療法併用陽子線治療についての支援も行っています。

・小児AYA世代の腫瘍に対する診療体制
春期から青年期を経て成人するまでの過渡期であるAYA(adolescent and young adult)世代で問題となるがんには小児期特有のものも含まれます。小児がんの治療は化学療法だけでなく、手術療法、陽子線を含めた放射線療法などの集学的治療が必要です。そのため小児科だけではなく、院内の関連各科とともに、小児AYA腫瘍カンファレンスを立ち上げ、小児・AYA世代を含めた小児がんの治療をスムースに行うことが可能となりました。

小児からAYA世代にかけては、ライフステージが急激に変化する時期です。就学や就労、恋愛、結婚や生殖機能、価値観や死生観など個人で状況が大きく異なります。小児科では治療後のフォローアップを外来で行っていますが、専門知識を持つ看護師、コメディカルが充実しているとは言えません。小児AYA世代の診療について研修を受講したソーシャルワーカーも増えつつあり、治療後の生活支援の充実をめざしています。

・がんゲノムパネル検査

2019年より保険適応となった、がんゲノムパネル検査、分子標的薬の検索のコンパニオン診断についても化学療法部を中心に、国立がんセンター中央病院と連携してエキスパートパネルを行っています。結果により、Germlineの異常の検索の追加確認を当科で行う場合もあります。必要に応じて当院の遺伝カウンセリングも可能です。

・セカンドオピニオン
セカンドオピニオン外来での他院からの患者さんのご相談も受けております。

3)名市大と多施設との連携
・名市大関連病院との連携
症例をご紹介いただくだけでなく、最近では、当院から遠方の患者様に対して、当科の充実した小児ネットワークによりALL寛解後や血管腫の維持療法を関連病院の小児科と連携して治療を継続することが可能です。
名市大小児科関連病院を中心として、疾患や研究についての情報交換、第4水曜日には名市大小児科連携病院血液グループ勉強会を開催しており、症例検討、画像や標本の供覧、診断や治療の検討、研究発表を行っています。
血液専門医の在籍する、西部医療センター、聖隷浜松病院、名古屋第二赤十字病院、豊橋市民病院、星ヶ丘マタニティ病院など、定期的に小児血液・腫瘍疾患についての臨床・研究カンファレンスを行っております。
2018年よりすでにWebを利用した勉強会を開始しており、愛知県以外の中部地区関連施設との情報交換も行っております。
症例検討、研究参加ご希望などございましたら、医局までご連絡いただけますと幸いです。

・全国臨床グループとの診療連携

・日本小児血液・がん連携病院
・JCCG参加施設
(リンパ腫委員会参加施設)
(横紋筋肉腫委員会参加施設)
・JACLS 運営委員会施設
・東海小児がん研究会 幹事施設
・東海小児血液懇話会 幹事施設
・東海小児造血幹細胞移植懇話会 幹事施設

今後もすべての患者さんに元気になっていただくために、名市大、関連病院とともに多職種、多診療科で努力したいと思います。名市大小児科から多くの情報を発信、情報交換できるように、全員で頑張ります。

3. 研究
臨床試験、病院・病態を含めた研究、晩期合併症を軽減する研究を行っています。

・ホジキンリンパ腫臨床研究
ホジキンリンパ腫の治療成績は良好ですが、晩期合併症が問題になっており、低リスク症例への照射や化学療法剤の軽減が望まれています。ホジキンリンパ腫は東アジアでは非常に症例が少ないため、全国臨床試験として、小児で初めての分子標的薬やcheckpoint阻害剤の効果を検討するための臨床試験を推進、計画中です。
2021年度は、台湾の長庚兒童醫學中心をはじめ、St. Jude VIVA Working gropeアジア諸国と国際共同試験を予定しています。

・ホジキンリンパ腫基礎研究
臨床試験をもとに治療薬(分子標的薬の標的となる遺伝子やpathway)との関連分子と治療反応性や予後との関連についての検討を目指しています。
具体的には、腫瘍細胞(Reed-Sternberg 細胞とmicroenvironmentの両方が発症、浸潤・転移、再発に関係していると考えられ、NF-κBやJAK-STAT経路、TP53、JAK-STAT経路やBCL6の異常が報告されています。
ホジキンリンパ腫では腫瘍細胞とmicroenvironmentの双方の検討が必要であり、発症病態を明らかにして、新規診断法の確立、予後因子を同定する研究を進めています。

・吸収性スペーサー研究
陽子線治療時に、隣接臓器とのマージンを確保するため、あらかじめ腫瘍と隣接臓器の間にスペーサーを留置する手技が確立し、他大学とともに小児におけるpoly glycolic acid性の吸収性スペーサーの開発、保険収載を進め、2019年より保険適用となりました。しかしながら、まだ小児での実績は少なく、化学療法を併用した吸収性スペーサー留置後の陽子線療法について、安全性を確立するため、現在名市大の小児科、小児外科、放射線科、西部医療センターを中心に全国臨床試験をすすめており、症例登録を開始しました。

・二次がん研究
小児がんの70%以上が治癒する時代となりました。一方、晩期合併症(成長障害、学習障害、二次がん、不妊など)の解決が、新たな課題として注目されています。この晩期合併症のなかにはがん治療終了後、何十年も経過したのちに症状があらわれることもあります。当院では、20年以上前からの症例データベースがあり、このような晩期合併症のなかでも二次がんについて解析を行っています。
また、小児AYAがんフォローアップ外来では、このような晩期合併症研究をもとに小児がんを経験された患者さんが過去に受けた治療内容を把握して、健康管理に役立てられるように、一緒に考えていきます。

・血友病研究
血友病は小児では中枢系出血を認める頻度が高と考えられるが、本邦ではまとまった報告がありません。定期補充必要であった群では、on-demand継続可能群と比較して中枢神経系出血の頻度が高いことを明らかにしました。乳児期では下肢の運動障害、膀胱直腸障害などの症状を見逃さないことが重要であると同時に、近年保険適用となった、バイスペシフィック抗体(ヘムライブラ)導入により、当院の症例も高いQOLが保てている一方、長期使用での報告は少なく、名市大関連病院との共同研究もめざしています。

4. 獲得研究費 (2021年4月時点)
亀井美智:小児固形腫瘍治療に対する粒子線治療のための吸収性スペーサー留置ラットモデルの構築(文部科学省科学研究費 基盤C)

5. 近年の研究業績
1)    Takeda R, Kamei M, Hattori T, Ito Y, Yazaki M, Matsubayashi T, Saitoh S. A case of infantile acute lymphoblastic leukemia with bilateral intraocular relapse    Nagoya Medical Journal, Vol.56・221-227・2020
2)    Okamura J., Miyake Y., Kamei M., Ito Y.,Matsubayashi T. Three infants with megaloblastic anemia caused by maternal vitamin B(12) deficiency. Pediatr. Int. 2020
3)    Kada A., Fukano R., Mori T., Kamei M., Tanaka F., Ueyama J., Sekimizu M., Osumi T., Mori T., Koga Y., Ohki K., Fujita N., Mitsui T., Saito A. M., Hashimoto H.,Kobayashi R. A Multicenter, Open-label, Clinical Trial to Assess the Effectiveness and Safety of Allogeneic Hematopoietic Stem Cell Transplantation Using Reduced-intensity Conditioning in Relapsed/refractory Anaplastic Large-cell Lymphoma in Children. Acta Med. Okayama 74: 89-94, 2020
4)    ⻲井 美智, 岩⽥ 宏満, ⾼⽊ ⼤輔. 【陽⼦線時代の⼩児がんに対するQOLを重視した放射線治療における⼯夫】⼩児悪性腫瘍の放射線治療における被ばく    低減術の全国調査結果と今後の展望. 京都府⽴医科⼤学雑誌 128: 907-915, 2019
5)    ⻲井 美智, 村井 太郎, 岩⽥ 宏満, ⾼⽊ ⼤輔, 近藤 知史,荻野 浩幸. 放射線治療 QOLを考慮した局所治療 ⼩児がんにおける放射線治療 ⼩児科医の⽴場から. ⽇本⼩児⾎液・がん学会雑誌 56: 141-147, 2019
6)    佐々⽊ 良平, 出⽔ 祐介, 岩⽥ 宏満, ⻲井 美智, ⽂野 誠久, ⾚坂 浩亮, 王 天縁, 妹尾 悟史, ⽝伏 祥⼦, 宮脇, ⼤輔, 吉⽥ 賢史, ⼩松 昇平,福本 巧. 放射線治療 QOLを考慮した局所治療 ⼩児がんに対する吸収性スペーサー留置を併⽤した粒⼦線治療. ⽇本⼩児⾎液・がん学会雑誌 56: 148-152, 2019
7)    Koga Y, Baba S, Fukano R, Nakamura K, Soejima T, Maeda N, Sunami S, Ueyama J, Mitsui T, Mori T, Osumi T, Sekimizu M, Ohki K, Tanaka F, Kamei M, Fujita N, Mori T, Saito A, Kada A, Kobayashi R. The Effect of Interim FDG-PET-guided Response-Adapted Therapy in Pediatric Patients with Hodgkin’s Lymphoma (HL-14) : Protocol for a Phase II Study. Acta Med. Okayama 72: 437-440, 2018
8)    Kobayashi R, Tanaka F, Nakazawa A, Ueyama J. Sunami S, Mitsui T, Koga Y, Mori T, Osumi T, Fukano R, Ohki K., Sekimizu M, Fujita N, Kamei M, Mori T. Pediatric follicular lymphoma in Japan. Int. J. Hematol. 105: 849-853, 2017

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