遺伝(臨床遺伝専門医)

名古屋市立大学大学院医学研究科 新生児・小児医学 病院助教 横井暁子
名古屋市立大学大学院医学研究科 新生児・小児医学 教授 齋藤伸治

1   はじめに
 遺伝医学研究の進展に伴い、一般臨床の現場でも遺伝子情報の導入は必要不可欠なものとなっています。臨床遺伝専門医制度は、2002年4月より日本人類遺伝学会と日本遺伝カウンセリング学会の認定医制度が統一化され設立されました。現在、全国で1,651人(2022年3月現在)、東海3県では150人ほどが資格取得しています。基本専門領域は産婦人科や小児科、血液・腫瘍内科、神経内科、耳鼻科、精神科など様々です。

2    対象となる専門医(認定医)制度(2022年5月現在)
・臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医制度委員会)

3    主な条件
・日本専門医機構の定める基本領域専門医(小児科専門医)または制度委員会の認める専門医であること
・日本人類遺伝学会あるいは日本遺伝カウンセリング学会の会員であること

4    資格取得への道(最短での取得期間:卒後9年)


 認定研修施設での3年間の研修が必要で、その間に遺伝医療20症例の経験と論文または学会発表が求められます。名古屋市立大学病院は認定研修施設であり、臨床遺伝カンファレンスを通じて様々な遺伝性疾患の経験ができます。もちろん、論文指導ももれなく行います。新生児・小児医療分野では次世代シーケンシングから遺伝子改変動物の作成と機能解析まで、幅広い研究に積極的に取り組んでおり、最先端の遺伝学研究に取り組むことができます。認定研修施設以外に在籍している場合でも、対面指導可能な臨床遺伝指導医に依頼すれば研修を開始することが可能です。
 また、遺伝カウンセリングは周産期・小児期、成人期、腫瘍の各分野の経験が必要ですが、網羅できない分野は学会主導の遺伝カウンセリング・ロールプレイ研修会に参加することで代替が出来ます。

5    専門医取得可能な所属施設
・名古屋市立大学病院
・名古屋市立大学附属西部医療センター

6    その後の活躍
 私が医師になった頃は「遺伝」とは産婦人科、小児科などの出生・発達に関わるものか、神経内科・整形外科などの難治性・進行性疾患に関わるごく一部の領域の問題でした。しかし2019年6月より、「がん遺伝子パネル検査」が保険適応され、がんゲノム医療が開始されました。がんゲノム医療を提供する施設では臨床遺伝専門医の常勤が必須もしくは望ましい条件とされていますが、市中病院では、まだ資格を取得している医師は少ないのが現状です。また生活習慣病の予防医学への関心の高まりから一部の商業目的の遺伝子検査が、一般の人の情報の混乱を招いています。今後、「遺伝」に関する期待や不安は増して、専門医によるカウンセリングの需要が多くなることが予測されます。そして臨床遺伝専門医には、小児科領域の診断やカウンセリングだけではなく、全ての診療科と連携し、施設全体の遺伝教育や倫理的問題などの対応でイニシアティブを取ることが期待されます。
 名古屋市立大学小児科では合同遺伝カンファレンスを産婦人科と月1回、東海小児遺伝カンファレンスを年2回開催しており、医局の垣根を越えてのサポート体制が整っています。資格取得を考えていらっしゃる先生方には、是非気軽に参加していただければと思います。

7    参考ホームページ
・日本人類遺伝学会(http://www.jbmg.jp/index.html

[記事公開日]2022/06/04
[最終更新日]2022/06/20